KAM

2020

  • collective housing

KAMの外装について / ウェザリングという言葉があります。風化、劣化という意味ですが、それを肯定的にデザインとして取り込むことを試みています。16世紀イタリアの建築家アンドレーア・パラーディオは、自身の設計によるヴィラのファサード面に大理石を張る際、ペディメント(窓上の二等辺三角形の飾り)の両脇など、雨が流れて汚れるだろう部分には斑入りの大理石を、綺麗に保てそうな部分には、均質で真っ白な大理石を、張り分けていたそうです。そのことを知って以来、自分が設計した建物が、時間の経過とともにどのように変化して行くのか意識するようになりました。そして得られた一つの回答が、ウェザリング仕上げです。新築時にはピカピカで、すぐに劣化してしまうようなものではなく、あるいは、いつまでも新築時のようにツルツルであり続けるのでもなく、最初から程よく周辺環境に馴染んでいるような、あたかも昔からそこに建っていたかのような建築の存在感を出したいと思いました。コンクリート型枠の表面性、脱型後の左官補修の具合、その上にのせる白色パテのしごき具合、最後はトップコート塗装の調色の具合、いくつもの職方の手仕事の積み重ねによって初めて現れてくる手の込んだ仕上げです。当然、予測できない偶然性を許容する心構えも必要です。しかし、カタログの写真そのままがテクスチャマッピングされたかのように出来上がってしまう通常の建物よりは、人間味のある、強い存在感を放つ建築になり得ます。このウェザリング仕上げが施されたKAMは、周辺に建つ多くの同規模のマンション(そのほとんどはタイル張りで、いつまでも新築時の綺麗さを保ち続けることが期待されているわけですが、)に比べ、全く異なる質の存在感を持って竣工しました。その、“時”が吸着したような外観は、まるで歴史が染み込んでいるかのような街、葛飾北斎ゆかりの地であり、近世から近代にかけて粋な町人文化が花開いた地であり、そして製造業の盛んなものづくりの地である亀沢にふさわしいものになったと思います。

所在地墨田区亀沢
用途集合住宅
構造RC造
規模7階
敷地面積198.26m2
建築面積154.58m2
延床面積706.82m2
建築設計aat+ヨコミゾマコト建築設計事務所
構造設計テクトニカ
設備設計建築エネルギー研究所
照明計画-
音響設計-
外構計画-
サイン計画-
内装設計-
施工栗本建設工業
設計期間2018年〜2019年
施工期間2019年〜2020年
その他25m2 ×16戸、30m2 ×1戸、50m2 ×2戸 、52m2 × 2戸、53m2 ×1戸、計22戸
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