Back to NEWS LIST

『大きな屋根 建てる ― 釜石市民ホール TETTO 2013-2019』

2019-12-01

『大きな屋根 建てる ― 釜石市民ホールTETTO 2013-2019』
2019年12月刊行
写真|奥山淳志 文|ヨコミゾマコト

内容
「釜石市民ホール TETTO」の工事の始まりから終わりまで、そして完成の瞬間や現在の日常、釜石の風景、人々の表情を、写真家・奥山淳志が捉えた。建築家の頭のなかで構想され、多くの人の手と物によってつくられ、やがてまちの風景となっていく。6年にわたる膨大な記録。

……………………

手元に置きたい写真集というものがあります。これはそういう一冊。『大きな屋根   建てる — 釜石市民ホールTETTO 2013-2019』ヨコミゾマコトさんが設計されたこの建築が立ち上がっていく有様と、完成後に市民の日常に馴染んでいく姿の記録です。建築は人が作り、人が使うもの。当たり前のことですが、写真家の温かい眼差しを通して提示されると、ウルっときます。こういう建築の記録の仕方もある、という事を写真を学ぶ学生に見せてあげたい。撮影は岩手県雫石町在住の奥山淳志さん。編集は僕もお世話になっている富井雄太郎さん。この本は、公共建築の建設と運営に関わる全ての人たちに勇気を与える1冊です。/小川重雄・写真家

震災復興とはどういうことなのだろう。
内陸ではありながらも岩手県に暮らし、3.11の震災を経験した者として、この言葉が先走っていく現状にはぬぐいきれない違和感があった。それは、震災から時を経るごとに大きくなっていったように思う。
理由は単純に、こうした聞こえの良い言葉とは裏腹に僕たちはどこを目指すのか、自分たち自身も正直わかっていなかったにもかかわらず、さも「知ったような顔」をしていたからなのだろう。人生なんてものは簡単に目標や目的を定められるものではない。僕たちは生きた鏡のようなもので、世界の様々な状況を映しながら、常に変わり続けている。ある意味、目の前の現実に対して、ときに大胆に、またあるときは慎重に対症療法を続ける行為にも近いと感じる。
それが震災の前では「震災復興」という聞こえの良い標語のような言葉に僕たちの目標が置き換えられた。それが、僕がずっと抱くことになった違和感だった。/奥山淳志・写真家 ホームページより一部抜粋

……………………

判型|225×290mm/272ページ[写真約250点]/スリーブケース付
価格|12,000円[税別]
発売|millegraph
ISBN978-4-910032-01-6
限定400部

奥山淳志(おくやま・あつし)
1972年大阪生まれ、奈良県育ち。京都外国語大学卒業後、出版社に勤務。1998年岩手県雫石町に移住し、写真家として活動を開始。以後、東北の風土や文化を撮影するほか、人間の生きることをテーマにした作品制作をおこなう。受賞歴に2006年「Country Songs ここで生きている」でフォトドキュメンタリーNIPPON2006、2015年「あたらしい糸に」で第40回伊奈信男賞、写真集『弁造 Benzo』および個展「庭とエスキース」(ニコンサロン)で2018年日本写真協会賞 新人賞、2019年第35回 写真の町 東川賞・特別作家賞がある。2019年『庭とエスキース』(みすず書房)を上梓。

ナンバリング入りの本書を、ご指定の住所にお届けいたします。下記のメールアドレスに、「郵便番号/お送り先住所/お名前/冊数」をお送りください。48時間以内に、お支払い方法を返信いたします。
book@aatplus.com

本書より


写真|奥山淳志

2017年3月1日 フライタワーの形状がはっきりしてきた。ホールの平面的な広さも天井高さも感じられるようになってきた。(中略)1工区西側の楽屋では設備工事が始まっている。構造体だけだったところに電気や空気、水を供給するための仕組みが取り付けられていく。骨だけだったものが次第に複雑な機能を持つ生き物のようなものに変わっていく。

2017年12月10日   10月31日に工事は完了した。2015年10月26日に着工してからちょうど2年が経過した。そしてこの日の午後、こけら落としとして第40回「かまいしの第九」が開催された。(中略)第九に先立ち、舞台に上がる釜石市立甲子中学校合唱団の生徒たちも到着し、館内すべてを使って公演準備が進められた。合唱付きなので出演者も多い。838席のシートは満席となった。釜石の文化史の新たな章が始まる。

文|ヨコミゾマコト

to top